生きることの喜び
素晴らしいとしか、言いようがない。楽曲の圧倒的な巨大さは言うまでもない。そして、指揮者と演奏者が、ブルックナーの作品を愛し、身も心も捧げ尽くして奏でる姿は、本当に美しい。音楽が今まさに生成され、開花される様が見事に収録されている。 5番は、それまでの作品に比し、その響きの壮大さでブルックナーが何かをつかんだことを伝えてくる作品である。あたかも、訥弁であった彼が、訥弁なままにしかし圧倒的な力を持って感動的に語り出すかのようである。その言葉と力に、朝比奈と大フィルの一人一人が衷心から共感し、一音一音を本当にひたむきに演奏している。 演奏を終えて、朝比奈のブルックナーでは1楽章分に匹敵するぐらいの拍手が伴うのが常である。今回映像を見て、なんと人間的で暖かい交わりがあったのか、ということを知った。単なるカーテンコールではなく、聴衆の拍手さえもが演奏の一部であり、DVDを見る私たちに何かを伝えてくれるようである。 出勤する前、帰宅した後も、私は何度もこのDVDをたとえ短時間であっても見ることを止められない。この映像に触れることで、生きることの素晴らしさ、生きることの喜びを感ずるからである。まさにこのDVDは、神と人間と音楽との間の愛と、その愛の素晴らしさを伝えている。
クラシックDVDの底力を見た
同じ年にフェスティバルホールで朝比奈&大フィルが演奏したブルックナーの第八番を聞いた。そのときの感動をまざまざと思い出す。クラシックDVDやCDでは、演奏の細かい部分の再現がどうの、ホールの響きがどうのとかいうことがよく言われるが、朝比奈のブルックナーを前にすると、もはやそんなことはどうでもよくなってしまう。最新のクラシックDVDでも数少ない5.1チャンネルによる音場と鮮明な映像が、迫真の演奏をあたかもその場で聞いているような臨場感を持って再現するのだ。演奏が終わった後、いつまでも帰ろうとせず拍手を続ける聴衆とそれに応える老巨匠。その眼鏡がうっすらと涙で曇るのをビデオカメラは見逃していない。朝比奈の演奏会の貴重な記録としても、傑出した一枚だと思う。こんなファンにとって、演奏の上手下手とかは、もはやどうでもいいことなのだ。このDVDを鑑賞するなら、5.1チャンネル対応のサウンドシステムの導入をぜひお勧めしたい。
東芝デジタルフロンティア
朝比奈隆 シカゴ交響楽団 1996年アメリカ公演 [DVD] NHKクラシカル 朝比奈隆 NHK交響楽団 DVD-BOX 朝比奈隆メモリアル・ボックス/ブルックナー交響曲全集
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